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2020-09-12

【インタビュー】「ミア・ファミリア」イ・ヒジュン作家とキム・ウンギ演出家

The Musical 2013年 11月号掲載

新作と共に再出発

ミアファミリアが開幕しました。どの公演も大切にされてるとは思いますが、今回の新作はお二人にとってどんな意味がある作品ですか?

キム・ウンギ(以下ウンギ)
僕達は今まで真面目な作品メインでやってきました。陰鬱な(笑)。とても演劇的でした。「俺たちも変身しよう」。ミュージカルのショー的な要素を乗せて、もう少し派手で大衆的に再出発しようとしました。自分なりのスタイルを持って堅くやり続けるのもいいですが、絶え間なく新しいことを見つけていくことも、僕たちに与えられた創作の喜びなんだと思います。こういう変身を見て、観客がどんな反応をするのか、不安半分期待半分ですね。

背景は1930年代のニューヨーク、ボードビル俳優が主人公です。俳優の日常と彼らの見せるオペレッタ、そしてマフィアの一代記まで、3つの話が同時に起こりますね。


ウンギ
普通は劇中劇は1つというのが主流ですが、僕たちの作品では2つです。人間が持っている両面性を超えた多面性に近づきたかったので。一方では楽しく遊んで、もう一方では芸術的な面影を見せ、また一方では現実的な存在の苦悩もある、3つの物語で人間の多面的な立場を見せたかったんです。

イ・ヒジュン(以下ヒジュン)

もともとはそんな設定ではなく、作品を開発する2~3年の間にとても変わりました。最初はマフィアの物語が中心だったのですが、その外に俳優という人物が入ってきて、彼らが演じる劇がもっと広がって。物語がやや単純で退屈じゃないかと思い、いろんな段階を経ながら変わっていきました。なんでマフィアの話なのか? 私たちがマフィア好きだからです(笑)。だから1930年代当時の時代背景に興味もたくさんあって。マフィアを素材にはしましたが、暗くて真面目に描こうという考えは無く、愉快でロマンチックなショーを通じて見せたかったんです。マフィアとボードビル俳優、そしてオペレッタ。すべてが1930年代ニューヨークの多様な風景ですよね。

そのような意図のせいか、コメディ要素が多いですよね。一般的なギャグコードとは違うB級ギャグ、または4次元コメディという話もありますね。

ウンギ
うちの子がギャグコンサートが大好きなんですよ。子供が見るから僕も見るじゃないですか。大人も子供も笑って、誰でも楽しく笑えるユーモアを見せたかったんです。でも4次元ギャグを好んでるわけではないです。

ヒジュン
そんな手腕もないし。

ウンギ

僕たちのギャグコードが一般的じゃないと感じたのなら、そういう理由だからかもしれないです。対人関係がほぼ無かったので、大衆が書くユーモアを知らず、結果的にこんな異色のユーモアを駆使したのかもしれません。人にもうちょっと会わなきゃいけないけど会えない、もしくは会わなくなったことによる4次元?(一同笑い)

これまでお二人が生み出した作品はいわゆるマニア嗜好だと呼ばれてはいますが、そんな外部の視線については納得できますか?

ヒジュン
なんにせよ関係ないです。今回の作品は今までより簡単で楽しい公演を作りたかっただけなんです。

ウンギ

僕たちの公演を見てくださる方なら皆さん感謝です。公演が好評でも酷評でも、それは観客固有の権限で、僕の権外の話ですから。もちろん楽しく見てくださればいいなという期待もします。全作品そうですが、「ミア・ファミリア」はより多くの人に見てもらえたら嬉しいです。過去の僕たちの作品を好きだった観客の中には、今回の作品を見て首をかしげる方もいるかと思いますが、それもまた感受しなきゃいけませんね。

より簡単で楽しい公演になるようショーやコメディ演技を目立たせてはいますが、依然としてお二人の作品らしい雰囲気をまとっています。

ヒジュン
暗い素材が好きですが、それをまさに暗く、深刻に、気だるい感じで漂わせるのは嫌です。深い闇を、むしろ愉快に楽しく表現するのが好きです。思春期の青少年の悩みや、バンパイアの欲望、マフィアの情緒など、すべてが暗いですが、それをロックコンサートのように表現したり、コメディで柔らかくしました。楽しくて激しく現れるロック音楽が好きです。私たちの作品はすべて違っても、それらに一貫する似た感じを受け取ったのなら、きっとこういう理由だからじゃないかなと思います。

望む通り、最善を尽くして

「ミア・ファミリア」だけでなく、これまでのお二人の作品を見てみると、フランス革命と甲申政変の「ラ・レヴォリュシオン」、バンパイアとタイムマシーンの「ママドントクライ」のように、全く異なって見える素材と時代を絡めたものが目立ちます。色が違う素材と形式をテーマに作ることに面白さを感じているのでしょうか。

ヒジュン
そうとは思わなかったです。無意識的にそんな欲求が現れたのか。

ウンギ
どうですかね。年を重ねて(笑)、違うものごとを比べて見るとき、より明確に見える時があるんです。外観が違っても、その中心に入ってみると本質は同じなんです。フランス革命当時と私達の歴史の状況には特別違うところが無いとも見えるし、数百年前のドラキュラと現代人の欲求に同じ点を見つけられるとか。意図したところではないですが、そういう同じ面を通じて作品のメッセージを強調したかったんじゃないですかね。

ヒジュン
私は制作会社の依頼を受けて脚本を書くこともあります。でもそれとは違って、私たちがチームを結んで作品を作る時は、私がやりたいどおりに思い切り書けるんです。中心の主題は別にあったとしても、劇中人物に私が経験した感情を投影したり、そうじゃなくても一度は語ってみたかった人々の物語を、隠喩的にでも心ゆくまま溶け込ませられるので。

ただやりたかった物語なだけなのに、お二人の作品は非常に独特で新しいと受け取られます。そんな話を聞いて、自分が変わった(※良い意味)人間だと自問したりしませんか?

ウンギ
僕たちはいたって……他の人達に比べて日常がとってもつまらない人間です。日常がひたすら単純で退屈です。

ヒジュン
社会的になれなくて、友達と会って親睦を図ることもほとんど無いですし。見てお分かりでしょうが、表情を変えることもほとんど無いし、あまり言葉も発しません。普段できないけれど表現したかったことを、すべて公演を通じて現してるんじゃないかと思いますね。

ウンギ
作品は、僕らを人に会わせてくれる唯一の友達という気もします。普通の人は午前に出勤して午後に退勤するじゃないですか。僕らは24時間ずっと出勤状態であり退勤状態なんです。30年間この仕事をしてきてますが、だんだん面白く感じてきました。

外部の依頼で作業する場合もありますが、観客は「キム・ウンギ、イ・ヒジュンブランド」としてお二人を記憶しています。コンビの個性がはっきりしていて、お二人が作りたい作品を作っているという感じを強く受けます。

ウンギ
僕たちも制作会社の方から一緒に作ろうという勧誘を受けます。僕たちが作りたい作品を彼らに見せれば、彼らはあれこれ専門的な意見をしてくると思います。大衆的な公演を作るためにはそういう助言も必要ですが、僕たちには不慣れなことなので、あまりそうはしていません。創作する時は干渉ではなく放牧が必要です。一日三食の代わりに、一日三回虫眼鏡で観察されるのは疲れるじゃないですか。専門的な会社と一緒にできないから、大変なこともあります。小さな規模でしか公演ができないんです。でも創作から制作全般をともにする、小さな家族のような人たちと仕事するのは楽しさもあります。不協和音無しにひとつになる心、そんな結束力と暖かさがあります。

それぞれの違う制作のやり方に短所長所がありますが、それでもその中から選択をしたということですね。

ウンギ
良い作品を生み出す道はいろいろあると思います。そのうちの一つが、僕たちのようなスタイルとも言えますよね。僕たちが創った作品を誰かが見て競争力があると判断して、もう少し専門的な助力を貰い発展できたらと思います。今はそんな初期段階に来ています。過去の僕たちが創った作品に対するプロポーズを受けてて。とても励みになります。最初に創作したときはそうではなかったのに、辛抱して3番目の作品まで創ると、そういう関心も見せてもらえて。とてもありがたいです。それでもやっぱり、現実は冷たい鞭を奮ってくることのほうが多いですね(笑)

それでも大衆の好みに合う作品を書きたくはないんですよね?

ウンギ
大衆のためだけに、やりたいことを諦めることができないんです。大衆と出会うことを拒否する人がいるでしょうか? 大衆が好きになるか少数が好きになるかはわかりませんが、僕たちが望むことを正直にやりたいんです。

ヒジュン
作品をちゃんと作れば誰かが好きになってくれるだろうという気持ちで、最善の作品を作ろうと思っています。

どういうものが良い作品だとお考えですか?

ウンギ
良い作品に対する正解は無いと思いますし、あったとしても駄目だと思います。でもこういうことは避けなければならないという基準はあります。まず、他の人がやったことをそのままやるのは駄目。そして作品をつまらなく作っては駄目。人々の興味を誘わないといけません。それからもうひとつが、この時代の人々と目の高さを合わせなければいけない点。基本的にはこういう基準を守れば、少なくとも良い作品に近づけるのではないでしょうか。
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