★登場人物紹介★(1人2役以上やってる)
ルイス(男): 主人公。冒険を夢見る17歳。小説家になると言って学校をやめた。父親の遺品である宝の地図を持っている。ジャックと出会い、海へ旅立つことになる。
アン(女): 途中で仲間に加わる銃士。ニュープロビタンス島の酒場で働いており、既婚者。私生児であり、教会を憎んでいる。酒場を訪れたジャックと出会い、仲間になる。
ジャック(男): キャプテン・キャリコ・ジャック。海賊船の船長。無人島に置いてかれたが、野生の大王ガメに乗って脱出した。同僚のケイラブを訪ね、その息子ルイスと出会う。酒が好き。
メリー(女): 途中で仲間に加わる剣士。戦闘狂。性別を偽って生きてきた。敵としてアンに出会い、後に愛し合うようになる。
●その他●
ハワード: ジャックの船に乗る老いぼれ海賊。なにかとジャックにケチをつける。彼は実は……
ケイラブ: 物語の開始2日前に亡くなったルイスの父親。いつも航海に出ており、最期の航海から帰ってきてからは酒を飲んでばかりで、そのまま死んでしまった。
ビクトリア2世: ケイラブが連れてきたオウム。ルイスの唯一の話し相手。
よくわかる相関図(わからん)
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(1)海賊の黄金時代
父親から聞かされた、海賊たちの黄金時代の物語に夢見るルイス。その物語をオウムのビクトリア2世に話す。
キャプテン・ジャック、ハワード……あれもこれも胸がときめく話ばかり。
父親は海賊で、航海から帰るたびにルイスに海の話をしてくれた。
(2)幽霊船
いつも「これが最期の航海だ」と嘘をつきながら、海に出ていった父親。最期の航海から帰った時、彼は酒を飲んで眠りについた。そして永遠に目覚めなかった。
一人になってしまったルイス。このまま幽霊船の中で孤独に死んでしまうのか。
そうだ、遺書を書こう……
……だなんて、馬鹿なことを考えていないで、もう寝ようとしたその時、吹き消したはずのロウソクがまた火を灯した。
そこに不思議な声が響く。
「ヘイ、ケイラブ…ケイラブ……」
扉を叩く音。「ケイラブ!」と父親の名前を呼びながら入ってくる謎の人物。
彼はルイスを見つけると嬉しそうに微笑んだ。「ルイス! ケイラブの自慢の息子!」
ケイラブはどこだと尋ねるが、父親は2日前に死んだばかりだ。
彼はキャプテン・ジャックだと名乗った。それはまさに、父親から聞かされていた物語に出てきた船長の名前。しかし、父親の話では、彼は無人島に捨てられ死んだはずだ。
「俺がそんなに簡単に死ぬと思うか?」 彼は大王ガメを捕まえて、その背に乗って帰ってきたという。
ケイラブの遺品はどこかと尋ねるジャック。父の遺品なんて何もない。「いつも最期の航海だと言ってたけれど、本当に最後になっちゃった」そう答えた。
(3)この街で一番の美形
「俺たちに最後なんてない。行き場は無いんだ。海以外」
誰もが海賊になると言った。誰だって海賊を夢見た。いつか自分が海賊になったら、海賊船に乗って全ての海賊に会うんだ――
すっかりジャックの言葉に魅了されたルイス。ジャックに父親の遺品のトランクを見せる。いまいちピンと来ていないジャックに、ルイスは「薔薇の絵が書かれた紙」を見せると、ジャックはそれを奪おうとした。
「これはローズアイランドの地図だ。海賊たちが最も愛する島。そこにはローズサファイアが埋まっているはずだ」
その当時、最も美しい宝石"ローズサファイア"を強奪した海賊たち。しかし宝石を分け合う前に、ジャックは無人島に捨てられてしまった。
ジャックは島から脱出してから船員の家を訪ねたが、誰ひとりとして戻ってきてはいなかった。
ケイラブ以外、誰も――
(4)母胎海賊の力
父親の残した絵が宝の地図だったことに驚くルイス。強気にも、この地図が欲しいなら自分を航海につれていけと主張する。
賛成しないジャックに、ついにルイスはその地図を飲み込んでしまった。
「地図なら僕が覚えてる! だから僕を連れて行って!」
愕然とするジャック。仕方なくルイスを仲間に連れて行くことにした。
海賊船を盗んで、船員を揃えて、あとは有能な「銃士」を見つけるのみだ。
しかし海賊たちには危険な存在があった。それは「海賊ハンター」。彼らに捕まれば、すぐに絞首刑だ。ルイスにそう忠告した。
(5)航海日誌
夢にまで見た海賊船に加わることになったルイス。日が沈んだ海を見ると、天国と地獄が連想された。
昨日まで、遺書を書いていたなんて信じられない。これからは航海日誌を書くことにした。
いったい何を書こう。そう思うと、母親の後ろ姿や父親の独り言が浮かんだ。「すまない、俺はお前よりも、あの海を愛しているんだ」
そんなことより、心の導くままに、夢見るままに書くしかない。
(6)海賊労働歌
ニュープロビダンス島に停泊することにしたジャック一行。
まだまだ幼いルイスに海賊の規則を教える。
1.酒は飲んでも飲まれるな。
2.賭博は禁止。
3.恋愛も禁止。
4.宝島の話も禁止。
あれこれ言うジャックに、ルイスは「そう言う自分が気をつけないとね~」と逃げ去る。
ジャックはあたりを見回し、酒を飲み始める。そして、案の定酔っ払う。
(7)ステラ・マリス
ジャックはニュープロビダンス島の、ある酒場にいた。"片足の海賊"に絡んだりと、泥酔したジャックに、酒場の主人アン・ボニーが声をかけた。
海賊船に乗って宝島へ行くんだ、と言うジャックの話を聞いてアンは自分を船に乗せるよう頼む。射撃なら自信があると。
断るジャック。アンはキャプテンより上手く撃つ自信があると挑発する。
すっかり挑発に乗ってしまったジャックは、射撃勝負に勝てば船に乗せてやると快諾する。
そして始まる二人の勝負。最初の勝負は引き分け。するとアンが勝負はこれからとライフルを取り出した。
「見なさい、私が星を撃ち落とす」
その言葉通り、アンは天の星を撃ち抜いてしまった。その光景に心を奪われるジャック。
しかし、海賊船には子供と女は乗せてはいけないルールがある。アホらしいが、では自分は男として、「アンソニー」として仲間に加わると言うアン。
喜んで迎え入れるジャックだったが、そこに訪問者が……
(8)嫉妬しろ
アンの夫が妻の家出を告訴したと、裁判官が酒場に現れた。
どうせ夫とは愛の無い契約結婚だったと説明するアンに、裁判官は神を侮辱するのならむち打ちの刑にすると脅す。
もう見ていられないジャックは、保釈金を出してアンを連れて行こうとするが、アンがそれを許さなかった。
「どうして貴方達が金をやり取りして、偉そうにしているの?」
裕福な家庭の私生児として生まれたアンは、教会に認められた子供ではなかった。しかし、結婚届になら名前を残してやると言われた。アンはそんな教会が、くだらない神が許せなかった。
これから私は海に自分だけの神を見つけに行く、そう言い残し世間には海で溺れて死んだフリをして、彼女はジャックの仲間に加わることになった。
(9)気のせいだ
ジャックはため息を付いた。
優秀な銃士のアン……もといアンソニーが仲間に加わることになった。
しかしどうしたものか。酒を飲むな、賭けをするな、恋に落ちるな。ルイスにそう忠告したはずだが、言った自分がすべて破ってしまっている。
きっと酔ったせいだ、気の迷いだ、気のせいだ……
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アンソニーが乗船したことにより、老いぼれ海賊のハワードが、分前が減ると不満を漏らした。しかしキャプテン・ジャックは口がうまい。海賊ハンターに狙われた時、きっとアンソニーが役に立つ、と船員たちを説得した。ハワードは納得していない様子だった。
「アンの実力を試すためにも、一度戦闘をしても良いかもしれない!」そう思いついたジャックに、「アンじゃなくてアンソニーでしょ?」と釘を刺すルイス。
父親のケイラブは、いつも海に出ていた。最後の航海から帰った時、オウムのビクトリア2世を連れて帰ってきた。坊主頭のチャーリーが飼っていた鳥だ。
(10)違いない
すると、向こうに船が一隻現れた。海賊旗を見ても逃げる様子を見せないどころか、こちらを攻撃してきた。
それは別の海賊船だった!
戦闘になったら、ルイスは倉庫に隠れていろとのキャプテンの命令だ。
向こうの船には剣闘士が乗っているのが見える。その背後にいた"片足の海賊"が叫んだ。
「あの船(腹)に、宝島の地図があるぞ!」
(11) LOVE AT FIRST SIGHT
しかし、どうしてか戦闘中に跳ね上がる鼓動。
互いに、夢にまで見た相手に出会ったかのような…………
(12)ただじゃおかない
相手は降伏したかのように見えた。アンが名前を尋ねると、自らを「マルコ」と名乗った。
しかし彼は負けじと再びナイフを構えた。
「馬鹿な真似はするな、お前はすでに私の捕虜だ」とアンが再度警告すると、おとなしくなったマルコは海に身投げをしようとする。
彼の行動に驚きながら、アンは銃を下ろし、降伏する。
「私は……お前の捕虜だ」
その姿に驚いたマルコ。彼女に再度名前を尋ねられると、今度は「マリア」と名乗った。
家計を助けるために死んだ兄のフリをして生きてきたマリア。
しかし自分を生かしてくれたアンに、これからはただ「メリー」と呼ぶように頼んだ。
それを聞いたアンも、自分の本名は「アン」だと打ち明け、メリーを仲間に迎え入れた。
(13)インターミッション
♪照明が消えて 俳優が退場して 客電が点いたら しばし 夢見る時間インターミッション!
(ここで伸びしたり席したり水飲んだり座り直したり、自由に休憩してください)
(14)幽霊船 rep
ジャックは、なぜアンがマルコを気に入ってるのか怪訝に思っているようだ。
ルイスは秘密をバラした。マルコはマリアで、アンはマリアが好きで、つまりジャックには勝ち目がないということを。
怒ったジャックは出ていってしまった。
アンとマルコが仲間に加わってから、戦闘では快勝。酔ったハワードを打ち負かしたこともあり、ジャックはマルコのことを認めたようだった。
突然、ルイスの持っていたコンパスが狂い始めた。様子がおかしいとジャックを呼ぶと、現れたのはマルコだった。
彼女は「このあたりには面白いものがある」と言って、目の前に現れた幽霊船を指差した。
怖がるルイに脇目も振らず、マルコは幽霊船に向かった。
先程まで誰かがいた跡があるのに、まるで時が止まったかのように、もぬけの殻な幽霊船。
マルコはそこで見つけた望遠鏡をルイスに手渡した。
その望遠鏡を覗くと、遠くに見知らぬ島があった。
そう、あれはローズアイランド?
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キャプテン・ジャック一行はローズアイランドにたどり着いた。しかし、求めていた宝は無かった。そこにはあったのは、何十人もの骸骨だけだった。
ハワードがナイフを取り出し、反旗を翻した。俺たちを騙したのか、ケイラブが宝石を奪って逃げたんだろう!?
ジャックは彼をなだめようとした。アンが銃を抜き、メリーが彼を制圧した。
裏切った海賊は、無人島へ置いていく。その規則に従い、ハワードはローズアイランドに置き去りにされることになった。
……すると、ハワードが銃を抜き、船の上にいるルイスとジャックを狙った。
しかし銃に当たったのは運の悪い船員だった。
それを見たアンは静かに銃を抜き、ハワードを撃ち抜いた。倒れた体は波に飲まれ、消えていった。
「海は海賊たちの共同墓地だ。ローズアイランドなら、本望だろう」 ジャックは無表情だった。
ルイスはジャックに尋ねた。
「本当にケイラブが、父さんが仲間を殺して、宝を奪って逃げたの?」
「こういう真実なんじゃないかと思った。だからお前を連れてきたくなかった」
「父さんはそんな人じゃない!」 取り乱すルイスにジャックは静かに言った。
「宝の前で人がどんなに変わるか、お前にはわからないだろう」
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しかしルイスは、ローズアイランドで何の成果も無かったわけではなかった。
地図に示された場所から、海賊たちの歌のとおりに進むと、そこには革紐でくくられたローズサファイアが一つと、砂に埋まった父親の航海日誌があった。
(15)ローズアイランド
座礁によって傷ついた船を修理する必要があり、我々はある島に船を停めた。
船を直す前に、奪ったローズサファイアを島の藪の中に運ぶことになった。
仲間が先に進む中、ローズサファイアの入った箱を抱えながら、ふと海を振り返った。
ジャック……無人島に捨てられ、きっと今頃、死んでいるだろう。
一行を追って藪の中に入った。すると、皆が血を流し倒れていた。生き残った一人の人影がこちらに迫ってきた。しかし、こちらのほうが早かった。最後の一人は俺になった。
倒れているチャーリーに駆け寄った。揺すっても彼は目覚めない。オウムのビクトリア二世が叫んだ。「逃ゲロ、ケイラブ、逃ゲロ、ケイラブ」
一体どこに逃げれば?
ローズサファイアを全て海に投げ捨てた。
きっとこの光景から逃げることは、一生できないのだろう。
血生臭さ、目眩、何もかも、静かに胸に葬った。
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日誌を読みながら、真実に涙を流すルイス。
日誌の最後には、ルイスへの言葉が書かれていた。
「お前にこの海を見せたかった。俺は弱虫で卑怯な海賊だった。でも、平和な時は誰よりも働いた。甲板が汚れていないのは、誰かが必死に働いているからなんだ」
(16)ジョリー・ロジャー
ジャックは、新しいジョリー・ロジャーを作ろうとしていた。それを見ただけで逃げ出してしまうような、恐ろしい海賊旗を。
しかし最悪なデザインセンスのジャックに、ルイスはメリーの双剣をモチーフにした海賊旗を描いて見せた。
新しいジョリー・ロジャーに満足げなジャック。機嫌が良いあまりに、自信の秘密をルイスにバラしてしまった。
「俺は人を殺したことがないんだ。無人島に捨てられたのも、戦闘から逃げ出したせいだ。その時、唯一俺を助けてくれたのがケイラブだった」
ルイスは彼に父親の航海日誌を見せた。「父さんは同僚を殺してなんか無かったよ」
ジャックは微笑んだ。
「海賊たちの友情がどれだけ熱いものか、お前にはわからないだろうさ」
「少しはわかる気がするよ」
ルイスは日誌を胸にジャックを見上げた。
『ルイス、お前にキャプテン・ジャックを紹介したかった。少し弱虫だったけど、かっこいい船長だったから』
(17)浪漫海賊
海賊の規則を守った自分をアンとメリーが許さないだろうと、彼はその場から逃げ出した。
(18)海賊の黄金時代 rep
ついに海賊ハンターが現れた。あれがかの有名なジョナサン・バーネット?
アンとメリーは二人だけで戦った。キャプテンや怖気づいた船員たちは皆逃げ出し、倉庫に隠れてしまった。
海賊の黄金時代の終わり、そこに二人は立っていた。
(19)この街で一番の美形 rep
戦闘はすぐに終わった。必死の抵抗を見せたアンとメリーだったが、相手の船には大砲があった。
海賊たちは捉えられ、全員絞首刑を言い渡された。
アンはジャックに叫んだ。「海賊らしく戦っていれば、海の上で死ねたのに」ジャックは何も言わなかった。
ルイスはジャックが庇ってくれたこともあり、一人解放され、生き延びた。
群衆に混じり、彼が絞首台に連れて行かれる姿を見守った。
「ジャック! 僕の日誌は、伝説でも噂でも中傷でもないよね? きっと航海日誌を完成させるよ。キャプテンの最期を、僕の見たままに書き残すよ……」
悲しげに自分を見送るルイス。
「俺が宝石を見つけたら、小さな島を手に入れて、さまよう海賊たちのための地上の楽園を作るんだ」
ジャックは彼を勇気づけるように歌い、絞首台へと上がっていった。
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ジャックは処刑された。
きっと彼が夢見た島も、この世界から消えてしまったのだろうか。
……さようなら、マイ・キャプテン
(20)ただじゃおかない rep
メリーは拘置所にいた。
アンの幻聴に悩まされ、こんなことなら出会わなければ良かった……そう思うほどに辛かった。
そこにアンが現れた。
「噂を聞いた父親が保釈金を出してくれたけど、断った。私はあなたと一緒にここで死ぬ」
(21)私達すべての、思い出せない夢
馬鹿な真似をするなと説得するメリー。
私が死んでも、あなたなら私を見つけられるはずだと頑なにアンを拒否し、ここから立ち去るように突き放す。
あまりにも勝手で残酷な別れに、アンは動くことができない。
しかし、メリーに「生きて」と言われ、涙をこらえながら、彼女に背を向けた。
去っていくアンを、泣きながら見送るメリー。
覚えていない夢の中で二人が出会っていたように、きっとまた出会えるはずだから。
そう願って、彼女は一人、処刑の日を迎えた。
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(22)フィナーレ
ルイスは家に帰ってきた。
書き留めた航海日誌を眺める。これがなければ、全て夢だと思ったかもしれない。
ジャック、アン、メリー、ハワード、ビクトリア。
そうだ、海賊の物語を書くんだ。
そう心に決めると、アンとメリーの声、キャプテン・ジャックの後ろ姿。全てが思い浮かんだ。
ところで、どうして問題ばかり起こすハワードを連れてきたんだろう?
するとジャックが答えた。
「小さい頃、憧れの海賊だったハワード。大人になってから彼を見つけて、思わず声をかけた。仲間にならないかと。いつの日か、自分があのガキだと打ち明けようと思ったんだがな……」
そしてジャックはウインクした。
「あの"片足"も、俺に出会ってなければもう少し長生きできていただろうにな!」
その言葉にインスピレーションを受けるルイス。
海賊の黄金時代の物語。
ルイスは思い出と想像をもとに、海賊たちの物語を書き始めるのだった。
Fin.